【7】 実験実習

 今回の授業では、秋田県立大学の研究施設を訪れ、最先端の実験設備に触れながら、大学教員による専門的な講義、実験を体験しました。

生物資源科学部

「身近にいる微生物の遺伝子増幅実験」 (応用生物科学科 竹下 和貴 助教) 

 「PCR(Polymerase Chain Reaction)」による遺伝子増幅は、現在のライフサイエンス研究や疾病診断、科学捜査に至るまで欠かすことのできない技術です。本実習ではこのPCRを体験しました。具体的には、身近な環境にいる微生物のDNAを抽出し、PCRにより遺伝子増幅を行いました。アガロースゲル電気泳動により、増幅した遺伝子断片を可視化し確認しました。

「イネの突然変異体を利用して遺伝子の機能を解明しよう!」(生物生産科学科 上田 健治准教授)

 私たちの食糧となるお米ができるためには、イネがもつ全ての遺伝子が正常にはたらく必要があります。この実験実習では、遺伝子のはたらきが異常になった突然変異体イネと、正常なイネがつくる花粉を顕微鏡で観察して比較しました。また、突然変異体イネの遺伝子の異常をPCRとアガロースゲル電気泳動によって分析することによって、遺伝子の異常とイネの花粉形成について考察しました。

「アオコって?〜八郎湖に生息する藻類の種類と藻類の進化を知ろう〜」(生物環境科学科 岡野 邦宏 准教授)

 秋田県八郎湖では、毎年夏季に「アオコ」が発生し、社会的な問題となっています。アオコは、藻類の1種である藍藻(シアノバクテリア)が大量に増殖して起こります。藍藻は、地球上で最初の酸素発生型光合成生物と考えられていて、藻類、さらには植物の進化を知るうえで重要です。八郎湖の水を顕微鏡で観察して、生息する藻類を知るとともに、いくつかの藻類や植物の光合成色素を分離し、藻類の進化と光合成色素の関係についても考えてみました。

「植物(イネ)を作る仕組みを考える」(アグリビジネス学科 永澤 信洋 准教授)

 植物の形態の研究は古くから行われてきましたが、1980年後半から行われアラビドプシスを用いた発生遺伝学的アプローチはその分子レベルでの理解を飛躍的に向上させました。その契機ともなった重要な発見の一つとして花器官の形質決定モデルである「ABCモデル」が挙げられます。いくつかのイネの突然変異体の観察やその遺伝子発現解析の結果をみてABCモデルがイネに適用できるのか考察しました。

システム科学技術学部

「材料物性」(機械工学科 伊藤 一志 准教授)

 多種多様な材料の中から使用目的に応じて適切に材料を選定するためには,材料の性質を的確に評価して、理解することが必要不可欠です。本実習では,2種類の金属材料におけるヤング率および線膨張係数を測定して、材料の物理的性質について検討しました。

「磁石と低温・超伝導」(機械工学科 二村 宗男 助教)

 今日の私たちの生活は、発電機やモータといった”電磁気”の技術によって成り立っています。磁場による力は,吸引力と反発力だけではありません。磁場についての理解を深め、電磁気の最先端である超伝導(超電導)に触れてその応用技術を理解しました。また、超伝導現象を起こすための液体窒素を使った低温における物体の変化についても実験しました。

「熱・流体現象を可視化して理解する」(機械工学科 大徳 忠史 助教)

 一般的に、目視できない現象をイメージすることは難しいと思います。その目視できない現象を工夫して観察できるようにしてしまおう、という技術を「可視化」と呼んでいます。さまざまな可視化手法の中からいくつかの基礎的な手法を体験しました。この実験を通じて、諸現象の物理的な理解を容易にする可視化計測手法を経験し、目視できない「流れ」を実際に目で見ることで、(生活の中にもある)物理現象への興味や理解の一助となりました。

「光ファイバーセンサーの試作」(機械工学科 合谷 賢治 助教)

 インターネット通信は光ファイバーによって成り立っている技術です。光は1秒間に地球を7.5周分の距離を移動でき、その速度は、およそ300,000,000m/s(30万km/s)に達します。この講座では、光ファイバーによる光伝送の仕組み、光通信の方法を学びました。また、実際に光ファイバーとLED光源、光センサーを組み合わせて、光ファイバーセンサーに触れてみました。

「光を用いた生体計測と病態検査について~脈拍・酸素濃度・光治療・お肌のバイオメカニクス~ 」(知能メカトロニクス学科 古川 大介 助教)

 光計測技術は、工業分野から医療分野まで広く利用されています。本講義では、光を利用したヒトを対象とする病態検査技術の原理を学び、コロナ禍で急速に普及した血中酸素濃度を検出するパルスオキシメータや、近年、がん治療に利用される光免疫療法、肌のアンチエイジングを断層可視化する光干渉断層画像法などを実際に体験しました。最先端の光計測技術や生体医工学分野への興味関心を深めることができました。

「抵抗およびインピーダンスの測定」(知能メカトロニクス学科 秋元 浩平 助教)

 電流や電圧の測定すべき量(被測定量)によって計測器に偏位(例えば、針の振れ)を生じさせて、その偏位の大きさから被測定量の値を求める方法は偏位法と呼ばれ、電気計測に使用される多くの指示電気計器にはこの方法が用いられています。一方、すでにその値が正確にわかっている量と被測定量とを比較して、検出器の偏位がゼロになるように平衡させてその値を求める方法(零位法)があります。本実習では、ホイートストン・ブリッジを使用した零位法により抵抗の値を測定することでブリッジ法の原理、特徴を理解しました。また、交流ブリッジをもちいてコイルのインダクタンスと損失抵抗を測定しました。

「太陽電池を使いこなす」(知能メカトロニクス学科 小宮山 崇夫 助教)

 太陽電池は、電池と名前が付いているものの身の回りに多くある乾電池などの化学電池とは振る舞いが異なります。本実習では、シリコン太陽電池の基本的な電気的性質を測定したのち、実際モジュールで使用する際に考慮すべきことのうち、最大電力点追従(MPPT)制御の必要性、角度最適化、影問題などを 測定を通して体験しました。そして、屋根上の太陽光発電や、メガソーラー発電所で発電量を最大化する方法を考察しました。

「Arduinoとセンサーを用いた環境センシング技術」(情報工学科 伊東 嗣功 助教)

 マイコンの一つであるArduinoと様々なセンサーを組み合わせて、身の回りの情報(温度、湿度、…etc)を計測しました。さらにセンサーとLEDを組み合わせ、人の目には見えない情報を数値化してLEDで可視化してみました。

「プログラミング入門」(情報工学科 中村 真輔 助教)

 問題解決のための機械的手順のことをアルゴリズムと呼び、特にコンピュータプログラムで用いられます。アルゴリズムは解決したい問題に応じて様々ですが、それらを構成する基本要素は順次・分岐・反復の3つのみです。この実験では、プログラミング環境として日本語ベースのPENを用い、平方根や最大公約数、データ整列などのプログラムを実際に書いて動かすことでアルゴリズムの基本要素について学びました。

「仮想空間で建築をまるごと設計  BIM(Building Information Modeling)入門」(建築システム工学科 込山 敦司 准教授)

 最先端の設計技術「BIM(Building Information Modeling)」が、多くの建物の設計や施工管理(建物を実際につくるとき)で用いられるようになってきました。すでに完成したミルハスや、秋田市役所、またいくつかの秋田市内の新築マンションなどで、利用されています。一方で、まだBIMを教育している教育機関は少数にとどまっており、その数少ない一つが、秋田県立大学です。BIMは、単なる3Dモデルではなく、どんな素材でできているか、その温熱特性や構造特性はどのようなものか、といった物理的な情報を管理して、設計デザインから環境や構造のシミュレーション、そして完成まで、作業をすすめるのが大きな特徴です。今回は、簡単な建物モデルの作成と、照明シミュレーションを体験し、将来、建築を仕事とした場合に確実に使いこなすことになるであろう技術の一端に触れることができました。

「CAVEを使ってVRの中に体を入れてみよう」(形成システム工学科 嶋崎 真仁 教授)

 CAVEとは、Cave type Automatic Virtual-reality Environmentの略で、洞穴のように、前方、左右、下面に配された4つの立体画面の環境に人間が入ることで、居ながらにしてコンピュータの世界に”没入”できる機械です。本実習では、CAVEとHMDに3Dで作られたCADデータやCGデータを導入して、その見え方を比較しました。

「割当問題からプログラミングを考えてみよう」(形成システム工学科 荒谷 洋輔 助教)

 この講義では、AI・機械学習等でよく耳にする「最適化問題」について学んだあと、最適化問題の実例を、高校数学の復習をしながら、学習しました。最後に、最適化問題の一部である「割当問題」を学びました。割当問題が実社会でどのように使われるか、プログラミング実践を通じて考察しました。

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